オレ流。


by Mazzan_tini

小川洋子 『博士の愛した数式』 (新潮社) ★★

 今年の本屋大賞受賞ということで、珍しく新刊を購入して読む。

 記憶がきっちり80分しか持たないという症状が実際あるかどうかは知らないが、映画『メメント』を観た人間としては、やや設定に二番煎じを感じてしまう。まあ、記憶障害というテーマは近頃ニュースやドキュメンタリーでもよく目にする話題だから、殊更に『メメント』からアイデアを拝借したというわけではないだろうけど。
 そうは言っても素材そのものは興味深いし、語り口も安定している。全体的に暖かみのある小説で幅広く支持されるのも頷ける。ただ、人物造形といい、話の運びといい、どうにも定型的過ぎる感があり、私はそれほどのめり込めなかった。読者を置き去りにすることを恐れずに、もう少し数学の世界に深く踏み込んでもらったほうが良かったんじゃないかと。
 
 ところで、この小川洋子という著者は阪神ファンなんだろうか。時代背景の1992年という年は、我々阪神ファンにとっては特別な年で、長く続いた低迷期に、突然確変を起こして優勝争いを演じた年である。この小説では阪神の快進撃と絡めて物語が描かれているのだが、正直、「阪神の話を持ち出す必要があるの?」と思ってしまった。江夏の背番号28が完全数であるとかもっともらしく数学と絡めてはいるが、言わせてもらえば、野球のルールもろくに知らんこの博士が江夏に対して熱い思いを抱いていたなんてとても思えない。野球はよく知らんが、選手は好きだなんて女の感覚じゃねえかと。野球ファンを舐めるなと。

 って、別につまらんわけじゃないんだけどね。大賞という肩書の割りにはちょいとばかり物足りないんじゃないのと、そういう話で。
[PR]
by Mazzan_tini | 2004-08-12 17:08 | 書評